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薬物治療で使用する薬について

患者様のこころの問題を解決に導いていく上で、薬物を使用した治療を行う場合もあります。薬物療法の役割として、抑うつ気分、幻覚や妄想、不安感、焦燥感などを抑える働きがあります。
そして、治療を行い症状が改善した後の再発防止としての役割もあります。一方でどの薬剤であっても投与のメリットとデメリットを慎重に判断する事が必要です。

睡眠薬

寝つきが悪い、寝ても途中で目が覚めてしまうなどの症状の改善に使用されます。薬の効き方によって「鎮静型」の睡眠薬と「自然な眠気を強める」睡眠薬があります。また、効果の継続時間によって 4 種類に分けられます。依存にならないためには適切な薬剤選択とひとりひとりに合わせた減量方法が大切です。

  • 超短時間型(作用時間:2〜4時間)

    睡眠薬の中では最も短く、睡眠導入剤とも呼ばれています。15〜30分程度で効果が現れて薬のきれも良いため、寝付きの悪い「入眠障害」の治療に効果的です。

  • 短時間型(作用時間:6〜10時間)

    15〜60分ほどで薬が効き始めるので「入眠障害」に効果的とされ、作用時間も長いので途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」の治療にも使用される場合があります。

  • 中時間型(作用時間:20〜24時間)

    作用時間はが長いため「中途覚醒」の治療や、予定の時間より早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」の治療に使用されます。作用時間が長い分、翌朝目が覚めても眠気が残る場合があります。

  • 長時間型(作用時間:24時間〜)

    作用時間が長く、穏やかに効果が現れます。「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」など幅広い症状に効果的で、抗不安効果もあるので、不眠と不安感が強い方にも使いやすい薬です。

抗うつ薬

主にうつ病や神経症の患者様に使用される薬です。発症に関係する神経細胞に働きかけることで、症状の改善が期待できます。抗うつ薬 は作用の違いから 4 種類に分けられます。ただし、うつ症状があっても苦悩か疾患かの区別はとても大切で薬物の必要度が違います。

  • SSRI

    うつ病は、セロトニンという神経伝達物質の減少によって発症すると考えられています。SSRIを使用してセロトニンを増やし、情報伝達力を強化することで症状の改善が期待できます。

  • SNRI

    セロトニンに加えて、ノルアドレナリンという神経伝達物質にも作用して増やすことができる抗うつ薬です。副作用が少なく、比較的早く効果が現れるといわれています。

  • NaSSA

    セロトニンとノルアドレナリンの放出を阻害する物質を遮断する働きがあり、これによりセロトニンとノルアドレナリンが減らないようにします。効果が現れるのが早く、長く続きます。

  • 三環系・四環系

    抗うつ薬の中で最も古いタイプの薬です。セロトニンとノルアドレナリンの放出を阻害する物質を遮断しますが、その他の神経伝達物質にも作用するため副作用がやや多くなります。

抗不安薬

抗不安薬は「精神安定剤」とも呼ばれ、現在使用されている抗不安薬は「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」がほとんどです。作用時間には短時間型・中時間型・長時間型があります。ただ、薬を内服しても不安に思われている事柄が解決するわけではありませんし、依存の面でも投与期間や薬剤選択に注意が必要です。他の治療法も検討が必要な場合もあります。抗不安薬の作用には、以下のようなものがあります。

  • 不安を和らげる(抗不安作用)
  • 筋肉の緊張をほぐす(筋弛緩作用)
  • 気持ちを落ち着かせる(鎮静作用)
  • 眠気を促す(催眠作用)
  • 筋肉のけいれんを抑える(抗けいれん作用)

抗精神病薬

抗精神病薬は、統合失調症の治療薬として作られた薬ですが、さまざまな病態に重要な役割を果たします。どのような症状に効果があるかで、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規) の 2 つに分けられます。

  • 定型抗精神病薬(従来型)

    脳にあるドーパミンという物質の分泌量や活動量に異常が起こり増えると、幻聴や妄想といった陽性症状が現れるといわれています。定型抗精神病薬にはドーパミンの増加を抑制する作用があるため、陽性症状を抑えることが期待できます。手の震えや体の強ばりなどの副作用が見られる場合があります。

  • 非定型抗精神病薬(新規)

    ドーパミンの増加を抑制すると陽性症状は改善が見込めますが、意欲や関心の低下などの陰性症状の改善にはほとんど効果が見込めません。そこで、他の神経伝達物質を介し、陰性症状にも効果が期待できるようにした薬が非定型抗精神病薬です。種類や量によってさまざまな効果があります。

気分安定薬

気分安定薬は、主に躁うつ病(双極性障害)の治療に使用される薬で、気分の波を落ち着かせる作用があります。気分安定薬には「気分を落ち着かせる(抗躁効果)」「気分を上げる(抗うつ効果)」「気分の波を小さくする(再発防止効果)」という効果が期待されます

  • 炭酸リチウム

    高揚感の抑制、落ち込んだ気分の底上げどちらにも有効で、再発防止効果が期待できます。リチウムの血中濃度が高くなると、副作用が出ます。手の震え、吐き気、下痢などがあり、ひどい場合は意識障害や喉の渇き、腎機能・胃腸障害などが現れますので定期的血液検査が重要です。

  • 抗てんかん薬

    元々は抗てんかん薬ですが、人によっては炭酸リチウムより安全であったり効果的であったりします。バルプロ酸ナトリウムやカルバマゼピンやラモトギリンなどが使用されます。種類によっては飲み合わせに注意が必要ですが、妊婦への影響が少ないものもあります。

抗認知症薬

認知症の進行抑制を謳っており、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンがあります。大きく賦活系と鎮静系という分け方も大切と思われます。認知症のタイプにより細やかな調整が必要です。ただ、進行が止まるわけではない現実を受け止め、患者様およびご家族の価値観や人生観に寄り添う中で、全人的に判断し、投与すべきか、投与している人に対しては継続すべきかを考える必要があります。

漢方薬

当院では、保険診療での漢方薬の処方も行っています。漢方薬は一般的な薬より副作用が少ないといわれており、体が本来もつ自然治癒力を高めることで症状の改善を目指します。漢方薬をご希望の方は、お気軽にご相談ください。よく処方されている漢方薬の一部をご紹介します。

  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

    のどのつかえ感、気分の落ち込み、動悸や吐き気を伴う神経性胃炎、不安感などの症状を抑える効果があります。悩みやすい方、几帳面な方などによく処方されます。

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

    体力と気力を補ってくれる漢方薬です。胃腸機能を改善する効果があり、全身の倦怠感や食欲不振を改善してくれます。食欲がなく、疲れやすい場合に効果的です。

  • 加味逍遙散(かみしょうさん)

    自律神経を調節してくれるので、のぼせやほてり、イライラ、落ち込み、不眠症などの改善に効果があります。血行促進効果もあるので、冷え性の改善も期待できます。

  • 抑肝散(よくかんさん)

    神経の高ぶりを沈めるこため、最近では発達障害の方のイライラや認知症の方の周辺症状の抑制にも使われており、シャルルボネ症候群の方やせん妄にも有効な場合もあります。